当店は明治18年に初代甚作が浜名湖畔三ヶ日の地でお菓子の商いをはじめて以来、五代にわたり地域のお客様に喜んでいただけるお菓子作りを目指してまいりました。
当時は姫街道の宿場町として往来する人々の手土産や一服のときのお供として多くの方にご愛顧いただいてきました。お菓子というのは食事とは違い、生きていくためのエネルギーとして必要なわけでありません。
本来、嗜好品として人々を幸せな気持ちにするという心を癒す役割、そして相手に喜んでもらいたいという気持ちを伝える役割を担いながら、心と心のやり取りをお手伝いするもだという先代達の思いを引き継ぎ商いをさせていただいております。
初代甚作はとても器用な職人だったそうで、いろいろなお菓子を作っていた中、砂糖で季節を表現した砂糖菓子を作り周囲を喜ばせていたという話まで伝わっています。
和菓子と一口に言っても、よくご存じの最中やおまんじゅう、大福やどら焼きなどのほかに米菓としてお煎餅やあられも含まれます。
実は当店初代の女将がお煎餅を手焼きしていたという話が伝わっています。
近年のうなぎ資源の減少によって、浜名湖地域の名産品であるうなぎの価格が高騰し、うなぎ専門店の経営に大きな影響を及ぼしているそうです。 私が公私ともにお世話になっている専門店の方も危機感を感じており、本業のうなぎの品質を高めさらに付加価値をつけることのほか、うなぎ加工品や地域の商品を扱うなどの努力をされています。
そういう状況を見聞きするうちに、日ごろの恩返しをするのは今しかない!と思い立ちました。
限りあるうなぎ資源を有効に活用しつつ、お客様、お店、地域にとって三方よしになるものは一体何だろうと三年ほど前からその構想を考え始めました。
いろいろ考えてみるとお土産に大切な要素として
「贈り物に適した見栄え」「持ち運びしやすい軽さ」「誰もが食べられる味」、そして「ここにしかないもの!」が頭に浮かびました。
そう思うと地元に名産品のうなぎを使ったお土産はたくさんありますが、うなぎのお煎餅に関してはまだメジャーではないことに気づきました。
市内でよく目にするうなぎ専門店のお土産用ではそのほとんどが白焼きの状態で販売されております。そういえば私の親戚もウナギの養殖が盛んな地域にあり、毎年うなぎの白焼きを贈ってくれていました。
幼少期より何気なく見ていた白焼き状態のうなぎが、実は多くの人が目にしているうなぎの流通状態だと再認識しました。
さらに自分自身が普段からうなぎの白焼きをわさび醤油で食べるのが好きということもあり、あえてうなぎといえば蒲焼という概念を覆し、今までにない新しい商品を創ろうと鰻の白焼きをイメージしたお煎餅の開発をはじめました。
いざ開発を始めると、どうせ新しい商品を開発するのなら、まだ誰も考えたことのない未知なる浜名湖土産を創りたい!という職人気質に火が付きました。
とはいってもお煎餅に関しての見識は浅く経験もない、さらに製造設備もない中でどうやってこのプロジェクトを進めていくかと悩みました。
東京の業務用機械の展示会に行ったり、製造を委託できそうなメーカーを探したりしている時に、実家が草加せんべい屋である和菓子修業時代の後輩に事の経緯を相談すると協力を快諾。
ここから試行錯誤の日々がはじまります。お煎餅といってもいろんな種類があり、それにより材料、配合、製法が異なります。さらにうなぎの白焼き風というのをどのように表現したらいいのかということが最も悩みました。
米菓の種類としてはもち米を使ったもの(おかき、あられ、揚げ餅)、うるち米を使ったもの(焼きせんべい、揚げせんべい)に大きく分かれます。その他に甘味煎餅、小麦粉煎餅、でん粉煎餅など米菓以外のお煎餅も候補に挙がりました。
日本人としての自分が考えるお煎餅とは、やっぱり「お米」を主役にすることが重要な要素であり、とするならば「お米」本来の味、香り、食感をもっとも活かせるものとして、中華でいうおこげの様な「米つぶせんべい」を選びました。
次にその素材をどのように味付けし、仕上げていくかを考えているときに、偶然にも今回の開発のきっかけとなった知人からの情報で、使われないうなぎの頭からつくられるうなぎのコラーゲンパウダーと、同じくうなぎの残渣から有機肥料をつくり、その肥料で育てたうなぎ米があることを知りました。
それらの情報と普段自分が白焼きをいただくときに愛用している白醤油風調味料「三河しろたまり」のことが頭の中で点と点がつながるようにイメージが膨らみました。
これらの素材を融合させたイメージを形にするため試作を重ねながら自分のイメージに合うように味を微調整し、ついにうなぎの白焼き煎餅のプロトタイプが完成!
うなぎのコラーゲンパウダーを加えて炊き上げたお米を、油で揚げた香ばしいかおりと、サクサクとした軽い食感、三河しろたまりの香りと味わいを楽しんでいただける逸品に仕上がっております。
本当の浜名湖土産を目指す!これが当商品を開発した最終目標です。
うなぎという素材を考えた時に、その夢は国内だけではなく海外にも広がりました。
このプロジェクトのコンサルタントが渡米するときに手土産としてプロトタイプを持参。ケンタッキー州のルイヴィルという街でバーボン樽を使って、州内で栽培された非遺伝子組み換え大豆にこだわって醤油を醸造している、アメリカ国内で唯一のSoy Sauce manと名乗るマット・ジェイミー氏は自身も醤油フレーバーのポップコーンなども作っているため、白い醤油を使っているということでとても興味深そうに食べてくれたそうです。
さらに同席していた友人でアメリカでは有名な創作系料理を作る韓国系アメリカ人シェフにも相当ウケがよかったということでした。
スタートからおよそ三年に渡るこのプロジェクトの序章。
しかし、ただ単純にうなぎのお煎餅をつくるだけなら誰でもできる。
ここからが「未知なる浜名湖土産プロジェクト」への本当の意味でのスタート地点なのです。
実はこれからの本章はいろいろな仕掛けが用意されており、実際にみなさんに召し上がっていただき評価していただくことで、物語が進んでいくことでしょう!
ぜひともこのお煎餅が浜名湖地域を代表する土産品に育ってくれれば幸いです。
それでは皆様、どうぞお召し上がりくださいませ。
株式会社入河屋 五代目 松嵜善治郎
うなぎ米(商標登録済)はうなぎを肥料に変え、その肥料を使用して栽培した、コシヒカリの特別栽培米です。
使用している肥料はうなぎの頭と魚のアラや昆布、エビやカニの甲羅と混ぜ合わせて有機JAS肥料にしています。栽培している水田は、魚やうなぎの稚魚の生息が確認された清らかな水を引き込み、水田鑑定士の鑑定の元、水質で一番ランクが上の「特A」の判定をもらった水田です。
農薬を5割以上削減し、うなぎの頭を入れた有機肥料を100%使用してつくったのがうなぎ米です。食感はもちもちした食感で、甘みがあるお米です。
うなぎ料理屋で使われず廃棄されてきたうなぎの頭部を、廃棄資源の有効利用という観点から酸化を防ぐ特許製法で保存。
浜名湖地域で廃棄されるうなぎの頭部の処理費用だけでも年間2000万円ぐらいかかるそうです。
今回使用したうなぎパウダーはそのうなぎの頭部を加水分解によってパウダー化したもの。
うなぎのコラーゲンはサケやスケトウダラの4倍も含有しているそうで、さらに今回のパウダーにはセラミドと呼ばれる成分も含まれている。
今回のうなぎの浜名湖せんべいはこのパウダーを添加して作っている。
愛知県産小麦と、伊豆大島の伝統海塩「海の精」を原料に、愛知県豊田市大多賀町の「足助仕込蔵」の木の樽で天然醸造した醤油です。
全ての素材が非遺伝子組み換え。
化学調味料・保存料は一切使わず、製造過程で火にかけることのない生のお醤油です。
そんなお醤油を特別に今回使用できることになりました。